おれの脳
酒っていうのは、いわゆるハードドラッグですね。
なぜかというと、脳の機能が麻痺します。
脳の機能が麻痺すると、何が悪いかっていうと、
普段抑制しているようなことや、普段、
全く考えたり、思い出したりすることのないようなことが、口をついてでてくることです。
でも、大きな人になれば、酒酔い運転な状態でも、普段仕事で思っていることや
人間関係や、くだらないことや、もろもろのことも、
単に愚痴をこぼしたり、溜飲を下げたりする場なのだと、事後処理ができるでしょう。
酒を飲んでいたから、という大義名分というか、水戸黄門の印籠というか、
いわゆるハードドラッグにやられていれば、その場や、その事後でも許されるんです。
というか、自分自身を赦してるんですね。
でも、この酒とかいうハードドラッグにやられて、なにが一番厳しいかというと、
家族や、親友や、友達や、同僚にも、話したことも触れられたこともないような、
自分の中のしまってた記憶や思い出を、想起してしまうきっかけになるということなんですよね。
音楽には、その時、その音楽を聴いていた場面に限らず、
生々しい気持ちや内面、情景を固定する機能があります。
僕はpixiesのDoolittleというアルバムを聴くと、
1曲目のdebaserから15曲目のgouge awayまで、
その当時の自分が置かれていたカスみたいな状況と、
それすらも直視しようとしない自分と、
その中でも何の違和感もありながらも楽しみを感じていた感覚と、
真夜中に万代に行っていた記憶が思い出されます。
救急車の音を聞きながら、あと10分の家までの道のりを、
どんな音楽で紛らわせばいいか考えています。
いまは、自分の乱れた呼吸しか聞こえません。
酒とかいうハードドラッグと、カナル型イヤホンとかいう産物の功罪ですね。